森の家で暮らしを始めるまでには、
思っていた以上に現実的な準備が必要だった。
改築の図面、伐採の見積もり、地下水の検査、
そして食品衛生責任者の資格取得。
どれも、この場所で生きていくために
避けて通れない出来事だった。
理想だけでも、現実だけでも、
暮らしは前に進まない。
そのあいだを行き来しながら、
私は少しずつ森の家の暮らしに
近づいていったのだと思う。
今回は、そんな
「森でのカフェを始める前の現実的な準備」について、
実際の体験をもとに書いていこうと思う。
改築の図面を前にして思ったこと

森の家の改築は、
まず一枚の図面から始まった。
それまで頭の中にあった
ぼんやりとした理想の暮らしが、
線と数字で示された現実として
目の前に現れた瞬間だった。
ここを直し、
ここに手を入れ、
暮らせる形に整えていく
図面には、そのための具体的な道筋が
静かに描かれていた。
同時に、
そこに書かれている内容はすべて、
「お金」と「時間」が必要なことでもあった。
理想に近づくためには、
現実を一つずつ受け入れていくしかない。
図面を見つめながら、
私はようやく、
森の家で生きていく覚悟のようなものに
触れていたのだと思う。
30年前に購入した林野地は
生活に必要な分しか整地もしていなかった。
長い年月のあいだ、
ほとんど手を付けずにきた土地だった。それでも敷地は600坪ある。
自宅部分以外は、
開墾しなければ使うことができない。庭にまで手をかけられるのか
予算の壁は高く、本当によく考えた末
必要最低限での改築を頼んだ。
工務店から届いた見取り図は
親身になって相談に乗ってくれた工務店社長の
細かな仕事が並んでいた。お気付きの方もいると思うが、自宅の台所を
営業目的の厨房にするということは家の中にもう1箇所、小さくても
自分専用の台所が必要になる。
我が家の場合は2階の押入れとして使用していた空間を
私の専用台所に改築してもらった。

一階の厨房と2階の台所。
一階は傷んでいた床や、壁紙も替えてもらい
天井はそのままで、厨房設備を入れてもらった。
二階の台所の壁紙だけは、
思いきり楽しいものにしたかった。
サンプルの中から選んだのは、
ピンク色のムーミン柄。

いまでも、
とても気に入っている。
水質検査
森のいえは、林野地にあるため、
これまでの暮らしは地下水で成り立っていた。
今回、保健所の許可を取るにあたり、
地下水の水質検査も受けることになった。

保健所から事前に検査キットを受け取り、
自分で水を持ち込んで検査を依頼した。
費用は一万五千円だった。
結果は、飲料に適している。
しかも、非常に優良な水質だという判定だった。
うれしかった。
けれど営業目的となると、
地下水をそのまま使うことはできなかった。
そのため、
塩素注入機の設置が必要になった。
工務店にとっても初めての対応だったようで、
設備担当の方が価格の安い機器を探し、
無事に設置してくれた。

工事の途中職人さんに
「こういう所で暮らしているってことは
水道水じゃない方がいいからでしょ?」と聞かれた。
私は
「もちろんそうだけど、保健所的にはアウトなの。」と答えた。
「お客さんだって、その方がいいに決まってるよ。
味が全然違うしね。」
そう言われて、
長いあいだこの水で生きてきたこと、
そして健康でいられた時間を思った。
それでも、
法律は安全を優先する。
どこか不本意な気持ちを抱えながら、
塩素注入機の設置は完了した。
そして、
保健所の検査の日が、
少しずつ近づいていった。
食品衛生責任者を取得した理由
釧路のカフェを開業する1年ほど前に
『食品衛生責任者』を取得していた。
取得する時は、まだ具体的にカフェの営業を
考えていたわけではなく
1日講習を受けて試験を受けると
その日に取得できるため
いつか欲しいと考えていたことだった。

地方によって講習日や試験日の違いがあると思う。
管轄の保健所へ行けば詳しく説明してくれるし
費用は当時で6千円ほどだった。
厨房を作って、保健所の検査を受けても
これが無いと営業許可が降りない。
だから、事前に余裕を持って取得しておく事を
おすすめしたい。
釧路市の場合、
講習会は年に二回しか開かれていなかった。
開業を決めてからでは
間に合わないこともある。
そう思うと、
あの時先に取得しておいたことは、
静かに背中を押してくれる
準備のひとつだったのだと思う。
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