6年ぶりの予約電話で気づいた「小さなカフェを続ける意味」|時々カフェ・春の山菜ランチ

「にっこりカフェ」時代のランチ画像です フードセラピー森のいえ

大型連休の真っ最中、北海道の森のいえで「時々カフェ」を開きました。今回ご予約くださったのは、なんと6年前に一度、ご予約をお断りせざるを得なかったお客様。あの日の留守電を聴いた瞬間、申し訳なさと驚きと、ありがたさが入り混じった気持ちが込み上げてきました。

「お店を一度閉めたら、もう自分のことは忘れられてしまうのでは」「予約を断ったお客様は、もう来てくださらないのでは」。小さな飲食店を続けてきた方や、これからお店を始めようと考えている方の中には、こうした不安を抱える方も多いのではないでしょうか。この記事では、6年ぶりにいただいた一本の電話から見えた「小さなカフェを続ける意味」と、その日の朝に森で摘んだ蕗のとうとヨモギを使った春のメニューづくりの工夫をお伝えします。

6年ぶりの留守電が届いた日|時々カフェの朝にあったこと

「時々カフェ」とは、私が本業の仕事の合間を縫って、不定期に開いている小さなランチ営業のことです。常設のカフェのように毎日開けているわけではなく、看板も出していません。通りがかりのお客様がふらりと立ち寄る形でもありません。それでも、6年ぶりに思い出して連絡をくださる方がいる。そのことに、あらためて驚きと深いありがたさを感じた一日になりました。

「時々カフェ」は、いつも次のような段取りで進めています。

工程 タイミング 内容
営業日決定 1〜2週間前 本業の休みが確定したら開店日を決定
予約受付の発信 1週間前〜 FacebookとInstagramで告知
メニュー考案 3〜4日前 季節の食材と仕込み時間から逆算
仕込み開始 2〜3日前 甘酒など発酵時間が必要なものから着手
当日の朝 早朝 森を歩いて旬の山菜を採取
営業 一組ずつ、ゆったりとした時間でご提供

今回は連休中の日曜日で、2組のご予約をいただきました。正直に言うと、準備や仕込みは毎回それなりに大変です。本業の合間に段取りを考え、材料をそろえ、朝から台所に立って、お客様の到着時刻から逆算して料理を仕上げていく。この一連の流れは、決して楽ではありません。それでも、開けてよかったと毎回思うのです。

閉店しても「にっこりカフェ」を覚えていてくれた人がいる

釧路のにっこりカフェの店内

帰宅して折り返しお電話したところ、お客様は、釧路で営んでいた「にっこりカフェ」がすでに閉店していることをご存じありませんでした。私の中では、お店を閉めてからずいぶん時間が経った気がしていたのに、いまだに当時のままの姿で記憶してくださっている方がいる。そう知って、少し驚き、そして胸の奥が静かにあたたかくなりました。

考えてみると、お店というのは「営業している期間」だけが、その存在の全てではないのですね。

お店の存在 続く期間
物理的な店舗 建物・看板・空間 営業期間中のみ
提供した料理の記憶 味・香り・盛り付け お客様の人生の中に長く残る
過ごした時間の空気 会話・店主との関係性 言葉にされなくても残り続ける
ふと思い出す瞬間 「またあの店に行きたい」 何年経っても訪れる

看板を下ろしても、場所が変わっても、誰かの記憶の中に、あの時のごはんや、店内に流れていた空気が残っていることがある。これは小さな飲食店をやってきて、初めて心の底から実感できたことでもあります。「お店を閉めたら、もう自分の料理は誰の生活にも残らないのでは」と不安に感じている方がもしいらっしゃったら、その心配はおそらく要りません。お客様の中で、お店はあなたが思っているよりずっと長く生き続けています。なお、これは私個人の経験から得た気づきで、すべての方に同じことが当てはまるとは限りませんが、誠実にお店を営んでこられた方なら、きっと近い経験をされる日がくるのではないかと思います。6年ぶりの留守電は、私にそのことを、静かに、でもたしかに教えてくれた気がしています。釧路のにっこりカフェから今に至る歩みは、森でVeganカフェを始めるまでの物語にも綴っています。

朝の森で摘んだ蕗のとうを、春の一皿に|エグミを抑える調理のコツ

今日のメニューは、料理に集中しすぎて、写真を撮り忘れてしまいました(笑)。お客様として来てくださった友人がムービーで残してくれたものが、今日の唯一の記録です。Instagramのストーリーズに後日アップする予定なので、よろしければそちらをご覧ください。

きのうの雨が嘘のように晴れた今朝、森の中へ蕗のとうを摘みに出かけました。時期はもう終わりかけで、花の部分は開いてしまっています。このまま使うとエグミが強く出てしまうので、葉の部分だけを丁寧に摘み取り、蕗味噌に仕立てることにしました。蕗のとうを使うとき、私が普段気をつけている点をまとめます。

蕗のとうの状態 おすすめの使い方 ポイント
つぼみが固く閉じている 天ぷら・素揚げ 香り・苦みのバランスが最良
少し開きはじめ 蕗味噌・佃煮 加熱でエグミが和らぐ
花が開ききっている 葉だけを使う 花の部分はエグミが強いため除く

今日の蕗味噌は、まろやかなアボカドにのせて一品に仕上げました。ほろ苦い蕗味噌と、なめらかなアボカド。春の苦みとやさしい油分が思った以上に好相性で、お客様にも喜んでいただけました。山菜の苦みは、油脂のあるものと合わせると角がとれて、やさしい味わいに変わります。

朝の森のヨモギで春の天ぷら|柔らかい新芽の見分け方

蕗のとうを採りながら森を歩いていると、足元には新芽のヨモギがたくさん顔を出していました。つい数日前に笹を刈ったときには、まだ姿を見せていなかったのに。「いつのまに!」と声が出てしまいました。自然のスピードには毎年驚かされます。出てきたばかりのヨモギは、葉が柔らかく、香りもまだやさしいのが特徴です。少し時間が経つと繊維が固くなり、苦みも強くなるので、「今日だけのチャンスだな」と思って天ぷらにすることにしました。ヨモギを料理に使うときの目安をまとめます。

時期 葉の状態 向いている料理
出はじめの新芽(春先) やわらかく香りが穏やか 天ぷら・草餅
葉が広がりはじめた頃 香りが立ち、繊維はまだ柔らかい 草餅・ヨモギ団子
茎が伸びてきた頃 繊維が固く苦みが強い 乾燥させてヨモギ茶

天ぷらにしたヨモギは、大根ステーキの横に添えて、ソースとともにお召し上がりいただきました。ほかにも定番の舞茸のフライ、大豆を使った料理、車麩の料理などとあわせて、お皿の上はにぎやかな春の景色に。森を歩いて見つけたものが、ちゃんと一品となって食卓に並ぶ。お皿の上のヨモギも、なんだか少し嬉しそうに見えました。

森の恵みをいただくときの、3つのマナー

森の山菜をいただくとき、私が大切にしている3つのマナーをお伝えします。

マナー 内容 理由
必要な分だけ摘む その日に使う量だけを採る 余らせて捨てるのは森への失礼
根こそぎ採らない 一株すべては採らず、必ず残す 来年も同じ場所で芽吹くため
採取場所を確認する 私有地・国有林・公園は事前確認 法律やマナー上のトラブル回避

なお、山菜の採取は地域によって規則が異なります。国有林や自然公園では採取が制限されている場合があるため、必ず管轄の自治体や林野庁の情報を確認したうえで行ってください。また、似た形をした有毒植物との誤食事故も毎年報告されています。ご自身で判別がつかない場合は、必ず詳しい方の指導を受けるようにしてください。

蕗のとうもヨモギも、お店から買ってきた食材ではありません。今朝、森を歩いて、ちょうど食べごろのものを見つけて、その日の料理に少しだけ加える——そんなスタイルです。たくさん採るのではなく、今必要な分だけ。春の苦みや香りは、ほんの少しでも食卓の空気をがらりと変えてくれます。季節がちゃんとお皿の上にのる感覚があって、「こういう料理こそ、森の家らしいな」と毎回しみじみ思います。

森のいえだからできる「時々カフェ」のかたち

その時期、その場所にあったものだけで生まれた、今日だけの小さなメニュー。それを「美味しい」と喜んでいただけたとき、「やっぱり料理は楽しいな」と心の底から思えます。自分一人のために、これほどたくさんの種類の料理を作ることはまずありません。だからこそ「時々カフェ」の日は、好きな料理を思いっきり楽しめる、私にとっても貴重な一日です。続けてきて感じている3つのよろこびを、最後にまとめます。

よろこび 内容
季節を一皿に閉じ込める その日の森にしかない食材を、その日の料理に使える
お客様との時間を深く味わう 不定期営業だからこそ、一組ずつにゆっくり向き合える
自分自身が育つ 毎回メニューを考え抜くことで、料理人として成長できる

準備や仕込みは、たしかに大変です。けれど、その大変さも含めて「ああ、今日も開けてよかった」と心から思える——そんな一日になりました。もし今、「常設のカフェを開くのは難しいけれど、料理を誰かに食べてもらえる場をつくりたい」とお考えの方がいらしたら、こうした不定期営業のスタイルも一つの選択肢になるのではないでしょうか。無理をせず、自分のペースで、季節と土地に寄り添った営みを続けていく。それが、森のいえだからこそできる「時々カフェ」のかたちです。

お芋とおからのヘルシーなコロッケ、ニラの塩麹漬けを添えて

時々カフェは、私の仕事や暮らしの予定に合わせて、日にちを決めて開いています。予約可能な日や、当日の流れ、ご予約方法については、フードセラピー森のいえのご案内にまとめています。森の静けさや季節の空気も一緒に味わっていただける時間にしたいと思っていますので、よろしければご覧ください。

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