北海道の森の中にある我が家では、毎日ではなく「時々」だけカフェを開いています。先日、まだ雪の残る春の入り口の一日に、その「時々カフェ」を営業しました。お客様にお出しするのは一度の食事ですが、その一皿の裏には、3日前から始まる仕込みがあります。
この記事では、自宅でヴィーガンランチのカフェを開く日の準備を、3日前から当日の提供まで時系列でご紹介します。自宅カフェや小さな飲食の場を考えている方、ヴィーガン料理の段取りを知りたい方に、リアルな舞台裏が伝わればうれしいです。
「時々カフェ」とは|毎日開かない自宅カフェのかたち
森の家のカフェは、決まった曜日に毎日開く一般的な飲食店ではありません。仕事や暮らしの合間に、ご予約に合わせて小さく開く形です。今回も、釧路時代から通ってくれている元同僚から「あなたのご飯が食べたい」と連絡をもらい、2名様をお迎えすることになりました。まだ雪が残る時期なので、車は1台で来られるかを確認してから日程を決めます。北海道の山あいでは、季節と天候の見極めも準備のうちです。
毎日営業しないからこそ、一組のお客様にじっくり向き合えます。その代わり、限られた営業日に向けて準備を凝縮させる必要があります。次の章から、その3日間の流れを具体的に見ていきます。
3日前|発酵の仕込みから始まる

森の家のヴィーガンランチは、基本که和食で、ご飯に合う料理が中心です。動物性を使わないぶん、うま味と発酵の力が味の決め手になります。だから準備は「発酵もの」から始まります。
今回は3日前に酵素玄米を炊き始めました。その前日に米を洗って準備し、あわせて醤油麹も仕込みます。2日前には甘酒を作っておきました。甘酒はデザートに使うだけでなく、卵を使わないヴィーガンのタルタルソースの材料にもなります。発酵調味料は仕込んでから味がのるまでに時間がかかるため、当日ではなく数日前から逆算して動くのがポイントです。ここが、ヴィーガンの料理を計画的に準備するコツのひとつです。
買い物|往復16kmだから「忘れない工夫」が要る
メモを手に、ときどき電卓で数量を確認しながら買い物に向かいます。野菜売り場から回り、頭の中でメニューを組み立て直すこともよくあります。今回は、この地域ではなかなか良いものに出会えないアボカドが、ちょうど食べごろの一個に出会えたので購入し、醤油麹のソースを乗せた一品になりました。素材との出会いでメニューが変わるのも、小さなカフェの楽しさです。
一方で、この日は売り場で知人に声をかけられて話し込み、メインに使う舞茸を買い忘れてしまいました。気づいたのは帰宅後。街まで往復16km、車で25分、買い物も含めると小一時間のロスです。山の中の自宅カフェでは、買い物のやり直しが大きな時間ロスになります。だから私は、買い物リストを売り場の順路に沿って書く、会計前に必ずリストと見比べる、という習慣をつけています。もし間に合わないときは、潔くメニューの一部を変更して対応します。失敗を減らす段取りも、続けるための大切な技術です。
前日|ソースを仕込み、心を整えて眠る

前日は、豆料理のための豆を洗って浸水させ、乾物を戻し、浅漬けも用意します。夜にはソース類を仕込みます。今回作ったのは、大根ステーキ用のソース、くるま麩料理に使うトマトソース、卵を使わないタルタルソース、サラダのドレッシング。ソースは前日に作っておくと味がなじみ、翌日のランチにちょうど良い状態になります。
そしてもう一つ、前日に大切にしているのが自分の状態を整えることです。穏やかに眠り、朝すぐ仕込みに入れるよう鍋などを出してから休みます。料理の段取りだけでなく、作り手のコンディションも料理の一部だと考えています。
当日のタイムライン|起床から提供まで

当日は朝早く、起きてすぐ仕込みを開始します。自宅カフェは、普段の生活空間にお客様を迎えるため、調理と並行して掃除や身支度も必要です。実際の流れはこんな具合です。
- 早朝:起床後すぐ調理開始。野菜を切り、蒸す・煮込む・炒める・茹でるを同時進行
- 調理中:味見をしながら進めるので、自分の朝食は省くことも
- 9時半頃〜:約1時間半かけて室内を掃除。トイレ・玄関まで磨き、お香を焚く
- 掃除後:身支度、エプロンと頭の布を整える
- 到着時刻から逆算:冷たい料理は再び冷蔵庫へ、温かい料理は再加熱して盛り付け開始
このように、自宅カフェの当日は「料理」と「空間づくり」を並行して回します。お客様を迎える準備は、味だけでなく場の心地よさまで含めて整えるものだと考えています。
お客様をお迎えして|数分で出せる仕込みの理由

お客様が到着したら、部屋の中央の大きなテーブルに案内します。寒くないか、暖房は足りているかを確かめてから、私はすぐ揚げ物にかかります。揚げ物以外はあらかじめ盛り付けてあるので、到着から数分でお食事を出せるようにしてあるのです。できたての揚げ物だけを直前に仕上げることで、待たせずに、いちばん美味しい状態でお出しできます。
森のいえのメニューは「Veganランチ」の一本だけ。お客様もそれを承知で来てくださるので、「今日は何だろう」とワクワクしてくれるのが伝わってきます。提供後は、料理の説明や種明かしを交えながら会話が続きます。数日前から準備した料理を喜んでもらえる時間は、何度開いても特別です。
この日のメニューは、次のような内容でした。
- 酵素玄米
- 具沢山の味噌汁(人参、蕪の皮、牛蒡、ネギ)
- 生野菜のサラダ(手作り中華風ドレッシング)
- 車麩のトマトソース煮込み
- 舞茸のフライ(ヴィーガンタルタルソース)
- ひよこ豆のクミン炒め
- 南瓜の胡麻和え
- 大根ステーキ
- アボカド、蕪の浅漬け など
日常的に食べられる料理と、森の家オリジナルの「これなんですか?」と思わず聞きたくなる料理を、両方意識して作っています。特に、大根ステーキの上に乗せたソースや、豆料理に使うクミンについては、よく質問をいただきます。
「時々カフェ」という働き方|よくある質問
Q. 予約はどのくらい前に必要ですか?
A. 準備の都合上、できれば3日前までにご予約ください。Instagram等で、ランチを提供できる日(時々カフェの日)を発信しています。
Q. メニューは選べますか/アレルギーの相談はできますか?
A. メニューは一つ、基本はその日の季節野菜に合わせたおまかせです。アレルギーがある場合は、予約時にご相談ください。
Q. 何名から利用できますか?
A. ご予約は2名以上6名までとさせていただいております。お一人でも、同じ日に数名のご予約があればお受けできます。
暮らしの延長にある、小さなカフェ
毎日営業するカフェではありませんが、こうして時々、森の家をひらいて誰かを迎える時間は、私にとって特別です。一皿の裏に3日間の準備があり、その積み重ねが、暮らしの延長としての小さなカフェを形づくっています。大きく広げるのではなく、無理なく続けられる形で、これからも少しずつ育てていきたいと思っています。
森の家では、こうしたヴィーガンランチの日(時々カフェ)や、料理教室・フードセラピスト養成コースを時々開いています。最新の開催日程・料金・ご予約方法は、フードセラピー森のいえのご案内にまとめていますので、気になる方はあわせてご覧ください。


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